REPORT / 第1号
ひとり親支援なび レポート 2026.8
数字で見るひとり親家庭
ひとり親家庭に向けた支援制度は、国にも自治体にもいくつも用意されています。 それでも「知らなかったから受け取れなかった」ということが起きています。
私たちは、その状況がいまどれくらいの規模で、どういう形で起きているのかを、推測ではなく公的な統計で確かめておきたいと考えました。 制度を解説するメディアとして、前提となる事実を自分たちで持っておくためです。
まとめたものは、同じ関心を持つ方——支援に携わる方、自治体のご担当者、報道の方——にも 使っていただけるよう、出典と調査年を明記して公開します。
調べ方
国の調査だけを使いました。厚生労働省とこども家庭庁が公表している調査資料(PDF・Excelの原表)から数値を直接読み取っています。 報道記事、まとめサイト、民間団体の資料は、内容の当否にかかわらず引用元にしていません。
数値はすべて、公表資料の該当箇所を確認したうえで掲載しています。 作成の過程で、検索結果に表示された「母子世帯の就業者のうち46.5%が非正規」という記述を検証しましたが、原典にその数値は存在せず、採用しませんでした。国際比較の順位についても、一次資料で確認できなかったため掲載していません。
調査によって「母子世帯」の定義が異なる点、比較にあたって注意が必要な点は、 それぞれの箇所と末尾に記載しています。
お読みになる方へ
ここに掲載しているのは、世帯全体の傾向を示す統計です。 個々のご家庭の状況が、そのまま表れているものではありません。
そのうえで読み取れることとして、母子世帯の母の86.3%は働いており、 正規で働く人の割合も5年前より増えています。それでも収入には差が残っています。
1. 子どもがいる世帯の相対的貧困率
同居する大人が他にいない、ひとりで子どもを育てる世帯は 44.7%。 大人が二人以上いる世帯の6倍以上です。 相対的貧困率とは、その国の標準的な所得の半分に満たない人の割合を指します。 2024年の基準額(貧困線)は138万円でした。
「子どもがいる現役世帯」=世帯主が18歳以上65歳未満で、17歳以下の子どもがいる世帯。この区分は「世帯に大人が何人いるか」であって、親が何人かではありません。「大人が一人」は、祖父母などと同居していないひとり親世帯です。「大人が二人以上」には、ふたり親世帯のほか、祖父母などと同居しているひとり親世帯も含まれます。
厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査」/所得は2024年の1年間/OECD新基準
2. 貧困率の推移
大人が二人以上いる世帯は下がりました。大人ひとりで子どもを育てる世帯は、ほとんど変わっていません。全体の貧困率(15.4%→15.0%)も、子どもの貧困率(11.5%→11.0%)も 下がっているなかで、ここだけが動いていない状態です。
上下でたて軸の目盛が異なります(上段は0〜60%、下段は0〜15%)。2本の線の高さを見比べることはできません。それぞれの動きだけをご覧ください。水準の差は図1をご覧ください。「大人が二人以上」には祖父母などと同居しているひとり親世帯も含まれます。
厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査」/所得はそれぞれ前年の1年間/OECD新基準(2018年は新基準の値)
3. 働いて得ている収入
こども家庭庁「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査」/収入は2020年の1年間
4. 世帯全体の所得
世帯の人数が違うため、1人当たりの額もあわせてご覧ください。(母子世帯 平均2.53人/児童のいる世帯 平均3.81人)
「児童のいる世帯」は18歳未満の子どもがいる世帯の全体で、母子世帯もその中に含まれます。ふたり親世帯だけを取り出した数値ではありません。
厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査」/所得は2024年の1年間
5. 母の86.3%が働いています
こども家庭庁「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査」/2021年11月1日現在
6. 暮らしの実感
母子世帯の 82.1% が、暮らしが「苦しい」と答えています。3年前は75.2%でした。
「児童のいる世帯」は母子世帯を含む全体の数値です。
厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査」/意識は2025年7月10日現在、貯蓄は2025年6月末日現在
7. 養育費は、決めても届いていない
離婚した母子世帯のうち、取り決めをしているのは46.7%。そのうえで、いま実際に受け取れているのは28.1%です。
こども家庭庁「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査」/2021年11月1日現在
このレポートから言えること
大人ひとりで子どもを育てる世帯の貧困率は44.7%で、この3年ほとんど変わっていません。 同じ期間に、大人が二人以上いる世帯は8.6%から6.7%へ下がりました。 全体の貧困率も子どもの貧困率も改善するなかで、ここだけが動いていません。
一方で、母子世帯の母の86.3%は働いており、正規で働く人の割合は5年前より増えています。 それでも母自身の就労収入は平均236万円です。就労の状況が改善しても、収入の差はそのまま残っています。
養育費は、取り決めをしている割合も受け取れている割合も前回調査より増えました。 それでも、実際に受け取れているのは28.1%です。
制度が足りないという話ではありません。用意されている制度が、必要な人のところまで届いていないという問題です。 制度の多くは申請しなければ受け取れず、自治体ごとに名称も要件も掲載場所も異なります。 生活が大きく変わる時期に、その調べものを一人で抱えることになります。
私たちはそこを埋めるために、制度の解説を公開しています。
数字の読み方について
2つの調査では「母子世帯」の定義が異なります。 国民生活基礎調査は「配偶者のいない65歳未満の女と20歳未満の子のみで構成する世帯」、 全国ひとり親世帯等調査は「母と20歳未満の子(同居親族がいてもよい)」です。そのため、両調査の世帯数を比較することはできません。
また「大人が一人/二人以上」の区分は、世帯にいる大人の人数による分類です。「大人が二人以上」はふたり親世帯と同義ではなく、祖父母などと同居しているひとり親世帯も含みます。「児童のいる世帯」は18歳未満の子どもがいる世帯の全体で、母子世帯もその中に含まれます。
相対的貧困率は2021年以降すべてOECD新基準による数値です。 2018年は旧基準(48.1%)と新基準(48.3%)の両方が公表されており、 本レポートでは新基準の値を用いています。
全国ひとり親世帯等調査は概ね5年ごとの実施で、現時点ではこれが最新です。 令和3年度の結果は推計値であり、前回調査との単純比較には注意が必要とされています。 次回は令和8年度に実施が予定されています。
出典
- 厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa25/index.html - こども家庭庁「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査」
https://www.cfa.go.jp/policies/hitori-oya/reserch_single-parent_households