REPORT / 第1号
ひとり親支援なび レポート 2026.8
数字で見るひとり親家庭
ひとり親家庭に向けた支援制度は、国にも自治体にもいくつも用意されています。 その情報を届けるメディアを始めるにあたって、私たちはまず読者がどういう状況に置かれているのかを、推測ではなく公的な統計で確かめておきたいと考えました。
働いていないから収入が低いのか。収入が低いのは一部の世帯だけなのか。 決まったはずのお金は、実際に届いているのか。 こうしたことを思い込みで語らないために、国の調査から数字を読み直しています。
まとめたものは、同じ関心を持つ方——支援に携わる方、自治体のご担当者、報道の方——にも 使っていただけるよう、出典と調査年を明記して公開します。
1. 1年間に親の離婚を経験した子ども
2024年の1年間に離婚した夫婦は185,904組。そのうち約半数の95,436組に、18歳未満の子どもがいました。この1年で親の離婚を経験した子どもは164,428人にのぼります。
ここでいう「18歳未満の子」は、統計上の「親権を行う子」です。この定義は2022年4月に20歳未満から18歳未満へ変わりました。そのため、2021年以前の数値とそのまま比べることはできません。
厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計(確定数)」上巻 離婚 第10.9表-1/2025年9月16日公表
2. 子どもがいる世帯の相対的貧困率
大人ひとりで子どもを育てている世帯で暮らす人のうち、44.7%が相対的貧困の状態にあります。 同じ調査で、大人が二人以上いる世帯では6.7%なので、6倍以上の開きがあります。 相対的貧困とは、その国の標準的な所得の半分に満たない状態を指します。 2024年の基準額(貧困線)は、世帯の大きさをそろえて計算した手取りで138万円でした。
138万円は、世帯の年収そのものではありません。手取り(収入から税金や社会保険料を引いた額)を、世帯人数の平方根で割って 世帯の大きさをそろえた額(等価可処分所得)で比べます。 世帯の手取りに直すと、次の額が目安になります。
母と子ども1人(2人世帯)… 約195万円
母と子ども2人(3人世帯)… 約239万円
母と子ども3人(4人世帯)… 約276万円
また44.7%は、世帯ではなくそこで暮らす人を数えた割合です。
「子どもがいる現役世帯」=世帯主が18歳以上65歳未満で、17歳以下の子どもがいる世帯。この区分は「世帯に大人が何人いるか」であって、親が何人かではありません。「大人が一人」は、祖父母などと同居していないひとり親世帯です。「大人が二人以上」には、ふたり親世帯のほか、祖父母などと同居しているひとり親世帯も含まれます。
厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査」/所得は2024年の1年間/OECD新基準
3. 貧困率の推移
大人が二人以上いる世帯の相対的貧困率は、8.6%から6.7%へ下がりました。大人ひとりで子どもを育てる世帯の相対的貧困率は、44.5%から44.7%でほとんど変わっていません。全体の貧困率(15.4%→15.0%)も、子どもの貧困率(11.5%→11.0%)も 下がっているなかで、大人ひとりで子どもを育てる世帯の相対的貧困率だけが 動いていない状態です。
上下でたて軸の目盛が異なります(上段は0〜60%、下段は0〜15%)。2本の線の高さを見比べることはできません。それぞれの動きだけをご覧ください。水準の差は 2 の図をご覧ください。「大人が二人以上」には祖父母などと同居しているひとり親世帯も含まれます。
厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査」/所得はそれぞれ前年の1年間/OECD新基準(2018年は新基準の値)
4. 働いて得ている収入
母子世帯の母が1年間に働いて得た収入は、平均236万円です。 働き方でみると、正規の職員・従業員は344万円、パート・アルバイト等は150万円でした。
厚生労働省「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査」(現在はこども家庭庁が所管)/収入は2020年の1年間
5. 世帯全体の所得
世帯の人数が違うため、1人当たりの額もあわせてご覧ください。(母子世帯 平均2.53人/児童のいる世帯 平均3.81人)
「児童のいる世帯」は18歳未満の子どもがいる世帯の全体で、母子世帯もその中に含まれます。ふたり親世帯だけを取り出した数値ではありません。
厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査」/所得は2024年の1年間
6. 母の86.3%が働いています
母子世帯の母のうち、働いている人は86.3%です。 5年前の調査(81.8%)より増えており、正規の職員・従業員の割合も44.2%から48.8%に増えています。
厚生労働省「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査」(現在はこども家庭庁が所管)/2021年11月1日現在
7. 暮らしの実感
母子世帯の 82.1% が、暮らしが「苦しい」と答えています。3年前は75.2%でした。
「児童のいる世帯」は母子世帯を含む全体の数値です。
厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査」/意識は2025年7月10日現在、貯蓄は2025年6月末日現在
8. 養育費は、決めても届いていない
離婚した母子世帯のうち、養育費の取り決めをしているのは46.7%です。そのうえで、いま実際に養育費を受け取れているのは28.1%にとどまります。
厚生労働省「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査」(現在はこども家庭庁が所管)/2021年11月1日現在
このレポートから言えること
8つの数字は、そろって同じ方向を指しています。母子世帯の82.1%が、暮らしを「苦しい」と答えました。 働いて得る収入は父子世帯の半分に届かず、相対的貧困の状態にある人の割合は 大人が二人以上いる世帯の6倍以上です。母子家庭の暮らしが厳しい状況に置かれていることは、統計の上でもはっきりしています。
大人ひとりで子どもを育てている世帯で暮らす人のうち、相対的貧困の状態にあるのは44.7%で、 この3年ほとんど変わっていません。 同じ期間に、大人が二人以上いる世帯では8.6%から6.7%へ下がりました。 全体の貧困率も子どもの貧困率も改善するなかで、大人ひとりで子どもを育てる世帯の相対的貧困率だけが動いていません。
一方で、母子世帯の母の86.3%は働いており、正規で働く人の割合は5年前より増えています。 それでも母自身の就労収入は平均236万円です。就労の状況が改善しても、収入の差はそのまま残っています。
養育費は、取り決めをしている割合も受け取れている割合も前回調査より増えました。 それでも、実際に受け取れているのは28.1%です。
国と自治体には、この状況を支えるための制度が用意されています。 ただし制度の多くは申請しなければ受け取れず、自治体ごとに名称も要件も掲載場所も異なります。 生活が大きく変わる時期に、その調べものを一人で抱えることになります。
私たちがまず目指すのは、用意されている制度を、必要な方がきちんと受け取れるようにすることです。そのために、制度の解説を公開しています。
数字の読み方について
ここに掲載しているのは、世帯全体の傾向を示す統計です。個々のご家庭の状況が、そのまま表れているものではありません。
使ったのは国の調査だけです。厚生労働省が公表している調査資料(PDF・Excelの原表)から数値を直接読み取っています。 報道記事、まとめサイト、民間団体の資料は、内容の当否にかかわらず引用元にしていません。 作成の過程で、検索結果に表示された「母子世帯の就業者のうち46.5%が非正規」という記述を検証しましたが、原典にその数値は存在せず、採用しませんでした。国際比較の順位についても、一次資料で確認できなかったため掲載していません。
2つの調査では「母子世帯」の定義が異なります。 国民生活基礎調査は「配偶者のいない65歳未満の女と20歳未満の子のみで構成する世帯」、 全国ひとり親世帯等調査は「母と20歳未満の子(同居親族がいてもよい)」です。そのため、両調査の世帯数を比較することはできません。
また「大人が一人/二人以上」の区分は、世帯にいる大人の人数による分類です。「大人が二人以上」はふたり親世帯と同義ではなく、祖父母などと同居しているひとり親世帯も含みます。「児童のいる世帯」は18歳未満の子どもがいる世帯の全体で、母子世帯もその中に含まれます。
相対的貧困率は2021年以降すべてOECD新基準による数値です。 2018年は旧基準(48.1%)と新基準(48.3%)の両方が公表されており、 本レポートでは新基準の値を用いています。
全国ひとり親世帯等調査は概ね5年ごとの実施で、現時点ではこれが最新です。 令和3年度の結果は推計値であり、前回調査との単純比較には注意が必要とされています。 次回は令和8年度に実施が予定されています。
出典
- 厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa25/index.html - 厚生労働省「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査」(現在はこども家庭庁が所管)
https://www.cfa.go.jp/policies/hitori-oya/reserch_single-parent_households - 厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計(確定数)」上巻 離婚 第10.9表-1(2025年9月16日公表)
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?tstat=000001028897&cycle=7&year=20240