家賃は自治体が大家さんへ直接払う|住居確保給付金は最長9か月間【令和8年度】

離職や収入減で家賃が払えなくなったとき、3か月(延長して最長9か月)のあいだ、家賃にあたるお金を自治体が原則として大家さんへ直接払ってくれる制度です。

みさき
先生、今日はちょっと違う相談で……。同じ職場のパートの人が、来月から契約を更新されないかもしれないって言っていて。もし自分がそうなったら、正直家賃が厳しいなと思ったんです。ひとり親家庭向けに、家賃を助けてくれる制度って何かありますか?
藤井先生
それなら「住居確保給付金」が使えるかもしれません。まず最初にお伝えしておきたいのですが、これはひとり親家庭専用の制度ではありません。離職や収入の減少で住まいを失うおそれがあり、収入・資産などの要件を満たす方であれば、母子家庭・父子家庭はもちろん、単身の方やお子さんのいない世帯も対象になり得ます。シングルマザーだから使える、使えないという制度ではなく、収入・資産などの要件を満たす方であれば、ひとり親家庭にとっても心強い選択肢になり得る制度だと考えてください。
みさき
そうなんですね。じゃあ、対象になるかどうかは置いておいて、まず制度そのものを知っておきたいです。
藤井先生
はい。それともう一つ、最初にお伝えしたい大事なことがあります。この給付金はあとで返す必要がないお金だということです。似たような名前の制度に「生活福祉資金貸付制度」という都道府県の社会福祉協議会が行っている支援がありますが、あちらは借りたお金を返していく「貸付」です。一方で住居確保給付金は返済不要の「給付」ですので、まずこの違いを知っておいてください。
みさき
借りるんじゃなくて、もらえるお金。それなら気軽に相談できそうです。
藤井先生
そう思ってもらって大丈夫です。ただ、一つだけ先にお伝えしておきたいことがあります。支給の対象になった住宅に実際には入居しなかった場合や、支給期間の途中でその住まいを退去した場合は、既に支給した分の返還を求められることがあります。「借りたお金を返す」のとは違いますが、「もらったらそれで終わり」というわけでもない、とだけ覚えておいてください。
みさき
そうなんですね……。返さなくていいと聞いて安心していましたが、退去したときは別なんですね。

住居確保給付金はどんな制度か

みさき
そもそも、どういう制度なんですか?
藤井先生
一言でいうと、離職や収入の減少で住まいを失うおそれがある方に、家賃にあたるお金を、期間を決めて支給する制度です。厚生労働省の説明では「離職・廃業から2年以内である方、または個人の責任・都合によらず収入が離職・廃業と同程度まで減少している方」が対象とされています。窓口となるのは、市区町村ごとに設置されている自立相談支援機関です。市区町村の福祉担当課が窓口になっている自治体もあれば、社会福祉協議会やNPOなどに委託している自治体もあります。
みさき
「家賃にあたるお金を支給する」っていうのは、私の口座にお金が振り込まれるってことですか?
藤井先生
そこが、この制度でいちばん誤解されやすいポイントです。家賃は自治体から、原則として家主さん・管理会社へ直接支払われます。ただし、クレジットカードや家賃保証会社で家賃を支払っている場合など、自治体が特に必要と認めたときは、本人の口座に振り込まれることもあります。
みさき
なるほど、原則は家主さんに直接払ってもらえる仕組みなんですね。私は直接受け取らない分、うっかり他のことに使ってしまう心配もないってことか。
藤井先生
そういう仕組みだと理解してもらえれば大丈夫です。まずはお住まいの市区町村の窓口を確認するところから始められます。

支給期間はどのくらいか

みさき
どのくらいの間、もらえるんですか?
藤井先生
原則として3か月間です。ただし、期間が終わったあとも収入が回復していない場合など、一定の要件を満たせば3か月ごとに延長を2回まで行うことができ、合計で最長9か月間まで支給を受けられます。
みさき
9か月あれば、その間に次の仕事を見つけたり、収入を立て直したりする時間になりそうですね。
藤井先生
そのための制度でもあります。それと、もう一つ知っておいてほしいのが「再支給」です。一度支給が終わったあとに、また離職・廃業などで収入が同程度まで下がってしまった場合、前回の支給が終わった月の翌月から1年が経過していれば、あらためて申請できる可能性があります。ただし、これ以外にも個別の事情によって扱いが変わる場合があるので、状況が変わったときはその都度、窓口に相談するのが確実です。
返さなくてよいお金・家賃は原則、大家さんへ

住居確保給付金は「貸付」ではなく「給付」です。返済は不要です。お金は原則として、自治体から家主さん・管理会社(賃貸人・管理会社)へ直接支払われます。ただし、対象の住宅に入居しなかった場合や支給期間内に退去した場合、不正受給があった場合は、既に支給した分の返還を求められることがあります

住居確保給付金のお金の流れと支給期間の図解。自治体から住まいの大家さん・管理会社へ、原則として直接家賃相当額が支払われることを示す。支給期間はSTEP1原則3か月、STEP2延長(3か月)、STEP3再延長(3か月)と続き、最長9か月間になることをタイムラインで示す

みさき
お金の流れと期間、よく分かりました。じゃあ次に気になるのは、実際いくらもらえるのかってところです。

支給額はどうやって決まるのか

藤井先生
ここが自治体ごとの差が大きいところなので、丁寧に説明しますね。支給額には上限があり、この上限は「住宅扶助基準額」という、生活保護の家賃補助と同じ基準で決まる金額です。住宅扶助基準額は、住んでいる地域と世帯の人数によって金額が変わります。
みさき
地域によって違うっていうのは、具体的にどのくらい違うものなんですか?
藤井先生
2026年8月時点で各自治体の公式サイトを確認したところ、たとえば単身世帯の上限額は、東京都特別区(世田谷区の例)で月額53,700円、大阪市で月額40,000円、福岡市で月額36,000円でした。同じ「単身世帯」でも、地域によって1万円以上の差があります。
世帯人数東京都特別区(例:世田谷区)大阪市(例)福岡市(例)
単身月額53,700円月額40,000円月額36,000円
2人月額64,000円月額48,000円月額43,000円
3〜5人月額69,800円月額52,000円月額47,000円
6人月額75,000円月額56,000円月額50,000円
7人以上月額83,800円月額62,000円月額56,000円

※上記は2026年8月時点で各市区の公式サイトに掲載されていた上限額の例です。実際の上限額はお住まいの市区町村ごとに定められており、この3市以外の金額や、将来の改定後の金額は異なります。ご自身の上限額は、必ずお住まいの市区町村の自立相談支援機関で確認してください。

みさき
上限は分かりましたけど、上限額がそのままもらえるわけじゃないですよね?
藤井先生
そのとおりです。実際にもらえる金額は、家賃額と世帯の収入によって次のように決まります。
ステップ
  1. 世帯の収入が「基準額」以下の場合は、実際の家賃額(上表の上限額まで)がそのまま支給されます
  2. 世帯の収入が「基準額」を超えている場合は、「基準額+実際の家賃額-世帯の収入額」で計算した金額が支給されます(上表の上限額が最大)
  3. 世帯の収入が「基準額+家賃額(上限あり)」を超える場合は、収入要件を満たさないため対象外になります
みさき
計算式だけだとちょっと分かりにくいんですが、具体的な例はありますか?
藤井先生
福岡市の案内にある例で説明しますね。単身世帯で家賃が5万円、収入が11万円、基準額が9.2万円のケースだと、支給額は「9.2万円+5.0万円-11.0万円=3.2万円」になります。収入が基準額より多くても、家賃の負担が大きければその分が補われる仕組みです。
みさき
収入がゼロに近くないともらえない制度だと思っていたので、少し意外でした。
藤井先生
そこは誤解されやすいところです。収入がある方でも、家賃の負担に対して収入が一定額を超えていなければ対象になり得ます。ただし、その「一定額」の具体的な数字は次の章でお話しする収入要件で決まりますし、地域によって基準額そのものが違うので、ご自身の場合はいくらになるか、窓口で試算してもらうのが確実です。
みさき
分かりました。じゃあ次は、そもそも誰が対象になるのかを教えてください。

対象になる人

みさき
対象になる人の話の前に、ひとつ聞いてもいいですか。私、てっきり家賃を滞納してしまってから相談するものだと思っていました。まだ滞納はしていないんですが、来月の家賃が払えるか正直自信がなくて……。こんな段階でも相談していいんでしょうか?
藤井先生
それは大事なところなので、はっきりお伝えします。住居確保給付金は、家賃を滞納した人のための制度ではありません。滞納の有無は、支給の要件になっていません。この給付金を定めている法律でも、対象は「家賃を支払うことが困難となった」方とされていて、実際に滞納したかどうかまでは求められていないんです。申請のときに提出する書類も、離職や収入が減ったことがわかる書類、収入・資産がわかる書類などで、「滞納している」ことを証明する書類は求められません。「来月の家賃が払えるか分からない」「収入が減って住まいを維持できそうにない」という段階でも、これからお話しする要件に当てはまれば申請できます。
みさき
滞納してから動くものだと思い込んでいました。それなら、今のうちに相談してみようかな。
藤井先生
そのほうが選べる方法も増えます。それでは、対象になる人の具体的な条件をお話ししますね。大きく分けると次の2つのケースに当てはまる方です。
対象になる主な条件

①主たる生計維持者が、離職・廃業の日から2年以内であること。②離職・廃業していなくても、本人の責めに帰すべき理由や本人の都合によらない事情(会社の休業や労働時間の短縮など)によって、収入が離職・廃業と同程度まで減少していること。①②のどちらかに当てはまり、そのうえで住まいを失った、または失うおそれがあることが必要です。

みさき
「本人の都合によらない」っていうのがポイントなんですね。自分から辞めた場合はどうなるんですか?
藤井先生
自己都合退職であっても、離職・廃業から2年以内であれば①の条件に当てはまるので対象になり得ます。②の「収入減少」のケースで問われるのは、あくまで会社都合の休業やシフト減など、本人の責任や都合によらない理由での収入減かどうかという点です。ここは個別の事情によって判断が分かれる部分なので、「自分の場合はどうなんだろう」と迷ったら、その時点で窓口に相談してもらって大丈夫です。要件に当てはまるかどうか分からなくても、窓口で一緒に確認してもらえます。
みさき
母子家庭・父子家庭だからといって、条件が変わるわけではないんですよね?
藤井先生
そうです。最初にお伝えしたとおり、この制度自体はひとり親家庭専用ではありません。ただ、ひとり親家庭は世帯の生計維持者が1人であることが多く、その1人の収入が減ると世帯収入全体に直結しやすいという意味で、この制度の対象になりやすい状況にあるとは言えます。シングルマザー・シングルファーザーのどちらも、要件を満たせば対象です。

収入要件と資産要件

みさき
収入の要件、もう少し詳しく知りたいです。
藤井先生
収入要件は「世帯の収入合計額が、収入基準額以下であること」です。収入基準額は「基準額+家賃額(上限あり)」で計算されます。基準額は、お住まいの市区町村民税の均等割が非課税となる収入額の12分の1にあたる金額で、これも地域と世帯人数によって変わります。
収入の水準支給の扱い
世帯収入が基準額以下家賃額(上限あり)を全額支給
世帯収入が基準額超〜収入基準額(基準額+家賃額)以下「基準額+家賃額-世帯収入」で計算した差額を支給
世帯収入が収入基準額を超える収入要件を満たさず対象外
みさき
「基準額」自体がいくらなのかは、住んでいる場所によって変わるってことですね。
藤井先生
はい。参考までに、2026年8月時点で確認できた例だと、福岡市の単身世帯の基準額は月額9.2万円でした。基準額も家賃額の上限も自治体ごとに異なるため、ご自身の収入基準額は必ずお住まいの自立相談支援機関で計算してもらってください
みさき
資産のほうの要件はどうなっていますか?貯金がある程度あると対象外になっちゃうんですか?
藤井先生
資産要件は、世帯の預貯金や現金、株式、投資信託などの金融資産の合計額が、一定額以下であることです。目安としては「基準額の6か月分。ただし100万円を超えない額」という考え方が全国共通で使われています。たとえば福岡市の案内では、単身世帯は55.2万円以下という基準が示されていました。
収入・資産の具体的な金額は自治体で確認

収入基準額の元になる「基準額」も、資産要件の上限額も、お住まいの市区町村によって異なります。この記事で紹介した数字はあくまで一例です。ご自身の世帯にあてはまる金額は、お住まいの自立相談支援機関に確認してください。要件を満たしているか自分では判断がつかなくても、窓口で一緒に計算してもらえます。

収入要件と資産要件のイメージ図解。収入要件は世帯収入と基準額・収入基準額の関係で3段階(基準額以下は家賃額を全額支給、基準額を超え収入基準額以下は差額を一部支給、収入基準額を超えると対象外)に分かれることを示す。資産要件は預貯金等の合計が基準額の6か月分(上限100万円)以下であることを示す

みさき
収入も資産も、まずは窓口で相談してみるのが一番早そうですね。
藤井先生
そう思います。次は、この制度に特有の「求職活動」の要件についてお話ししますね。

求職活動という条件

みさき
さっきから気になっていたんですが、この制度って「働く」ことも条件になっているんですか?
藤井先生
はい、そこがこの制度の大きな特徴です。家賃を補助してもらう代わりに、支給を受けている間は求職活動を行うことが要件になっています。ここを知らずに申請してしまうと、あとで「こんなに活動しないといけないなんて知らなかった」と続けるのが大変になってしまうケースがあるので、最初にしっかりお伝えしておきますね。
みさき
どんな活動をすればいいんですか?
藤井先生
離職・廃業した方や、休業などで収入が減った方(被雇用者)の場合、大きく分けて次の3つを行うことが求められます。この回数は全国共通で、自治体によって変わるものではありません
求職活動の種類頻度(全国共通の基準)
自立相談支援機関との面接月4回以上
ハローワーク等での職業相談・求職申込み月2回以上
企業等への応募・面接原則週1回以上
藤井先生
自営業の方の場合は、経営相談窓口への相談(月1回以上)や、給与以外の収入を得る機会を増やす取り組みなど、離職者とは別のルートの活動が用意されています。月4回・月2回・週1回という回数は全国共通で、自治体の判断で減らせるものではありません。
みさき
回数が同じなら、自治体によって何が変わってくるんですか?
藤井先生
面談の窓口の名前や日程の組み方に加えて、面談を対面で行うか電話等で行うかは自治体や本人の状況によって違います。対面か電話かは自治体や体調によって違うので、窓口に相談してくださいね。
みさき
月4回の面接、月2回のハローワーク、週1回の応募……。正直、結構な頻度だなと感じました。
藤井先生
そう感じる方は多いです。だからこそ、支給が決まった段階で「今月はいつ、どこで、何をすればいいか」を自立相談支援機関の担当者と一緒にスケジュールに落とし込んでおくのがおすすめです。求職活動を行わなかった場合、支給が途中で中止になることがあります。ただ、これは「頑張っていないから罰する」という趣旨ではなく、就労による自立に向けて一緒に取り組むための要件だと理解してもらえるといいと思います。
みさき
途中で体調を崩したりして、活動が難しくなったらどうなりますか?
藤井先生
そこは自己判断で諦めなくて大丈夫なように、決まりがあります。疾病や負傷、育児など、都道府県等がやむを得ないと認める事情によって続けて30日以上求職活動ができなかった場合は、医師の証明書などを提出すれば支給は止まりません。活動できなかったこと自体を理由に不利益を受けるわけではないということです。
みさき
それは知らなかったです。もっと長引いて、そもそも求職活動そのものが難しくなってしまったら……?
藤井先生
疾病または負傷が理由で求職活動を続けられなくなった場合は、「支給の中断」という仕組みが使えます。いったん支給をお休みし、体調が回復して求職活動を再開できるようになったら、支給も再開してもらえる制度です。中断できる期間は、中断を決めた日から2年以内で、中断の前後を合わせた支給期間は最長9か月という上限は変わりません。自己判断で「もう無理だ」とあきらめず、体調が理由で活動が難しくなったときは、そのことを自立相談支援機関に伝えてください。
みさき
体調のこと以外だと、どうしても求職活動が難しいときって他にはないんでしょうか?
藤井先生
あります。たとえば職業訓練校に通うなど、就労準備支援事業を集中的に利用する場合は、そのことを自立支援計画(プラン)に位置づけることで、求職活動要件を一定期間留保できる仕組みがあります。また、大阪市や札幌市のように、育児など疾病・負傷以外のやむを得ない事情でも申し出るよう案内している自治体もあります(国の制度としての中断事由は疾病・負傷に限られますが、自治体の窓口対応として実際に案内されています)。回数どおりに活動できるか不安なときこそ、諦める前に、まず自立相談支援機関の窓口に相談してみてください。
みさき
分かりました。じゃあ実際に申請するときの流れを教えてください。

申請の流れと必要書類

藤井先生
申請の流れは、次のようになります。
ステップ
  1. お住まいの市区町村の自立相談支援機関に相談する
  2. 制度の説明を受け、対象になりそうか確認したうえで、必要書類を準備する
  3. 申請書と確認書類を窓口に提出する(申請日は、原則として書類を提出した日になります)
  4. 自治体で支給の審査が行われる(書類の提出から支給決定まで、1か月程度かかる場合があります)
  5. 支給が決定すると、申請月分の家賃相当額から、自治体が原則として家主さん・管理会社へ直接支払いを開始する
みさき
必要な書類って、どんなものがありますか?
藤井先生
一例として、次のような書類が求められます。必要書類は、申請理由や世帯状況、市区町村によって異なります。以下はあくまで一例なので、窓口へ行く前に、必ずお住まいの市区町村へ確認してください。
書類の種類内容の一例
本人確認書類運転免許証、マイナンバーカード、パスポート等(顔写真付きが基本。ない場合は2種類以上)
離職・収入減少の確認書類離職票、雇用保険受給資格者証、廃業届、シフト表(勤務条件の変化が分かるもの)等
収入確認書類給与明細書、年金等の公的給付の証明書等(各種控除前の金額が分かるもの)
預貯金確認書類申請者および同居する親族の預貯金通帳の写し(口座名義のページと直近数か月分の記載ページ)
賃貸借契約書現在住んでいる住宅の契約内容が分かるもの
みさき
「シフト表」も書類になるっていうのは知らなかったです。収入が減ったことを証明するのに使えるんですね。
藤井先生
そうなんです。離職していなくても、シフトが減って収入が下がったことを示す資料として使えます。申請日は、書類を提出した日(郵送の場合は消印日)が基準になり、それより前の家賃、つまり滞納している家賃には充てられません。申請が遅れるほど支給開始のタイミングも遅くなるので、「対象になるかもしれない」と思った時点で、早めに窓口に相談することをおすすめします。
みさき
「〇月〇日までに申請」みたいな、決まった申請期限はあるんですか?
藤井先生
児童扶養手当の現況届のような、毎年決まった時期の申請期限はありません。離職・廃業などの要件に当てはまる状態であれば、年間を通じていつでも申請できます。ただし、さきほどお話ししたとおり、支給は申請月分の家賃からしか始まらず、さかのぼって過去の家賃に充てることはできません。つまり「申請が遅れた分だけ、もらえる家賃の月数が減る」という意味では、実質的に早く動いたほうが有利になります。焦って申請する必要はありませんが、「対象になるかもしれない」と思ったら、先延ばしにせず早めに窓口へ相談することをおすすめします。

お金の受け取り方と生活保護との関係

みさき
最初に「大家さんに直接振り込まれる」というお話がありましたけど、これって毎月なんですか?
藤井先生
はい、支給が決まると、原則として毎月、家賃相当額が自治体から家主さん・管理会社へ直接振り込まれます
みさき
それは安心です。ところで、生活保護とはどういう関係になるんですか?
藤井先生
大事なポイントなので、はっきりお伝えしますね。生活保護をすでに受給している方は、住居確保給付金の対象にはなりません。生活保護には、家賃にあたる「住宅扶助」がすでに含まれているため、住居確保給付金と重ねて受け取ることはできない仕組みになっています。
みさき
じゃあ、生活保護を申請するか、住居確保給付金を申請するか、自分で決めないといけないんですか?
藤井先生
実はそこも、一人で決める必要はありません。窓口である自立相談支援機関は、住居確保給付金だけでなく、生活保護や、これから紹介する生活福祉資金貸付制度、その他の支援も含めて、その方の状況に合った制度を一緒に整理してくれる窓口です。同じ窓口で、家計の立て直しや就労に関する相談にも対応してもらえます。「どちらが自分に合っているか分からない」という状態のまま相談に行っても大丈夫です。
申請しても対象外だったとき

収入や資産の状況によっては、相談・申請の結果、対象外と判定されることもあります。それは申請の仕方が悪かったからでも、努力が足りなかったからでもありません。要件は世帯ごとの収入・資産・離職状況で機械的に判定されるものなので、対象外だった場合は、生活福祉資金貸付制度や、そのほかの支援制度(自立相談支援機関で案内してもらえます)に切り替えて相談するのも一つの方法です。

みさき
「対象外でも自分を責めなくていい」っていうお話、聞けてよかったです。じゃあ最後に、内容を表でまとめてもらえますか?

住居確保給付金の基本情報まとめ

項目内容
制度名住居確保給付金
対象離職・廃業から2年以内、または本人の責めに帰さない理由・都合によらない事情で収入が離職・廃業と同程度まで減少し、住まいを失った、または失うおそれがある方(ひとり親家庭専用ではありません)
支給額家賃相当額(上限は住宅扶助基準額。地域・世帯人数により異なる。上記の例は2026年8月時点の一部自治体の金額。必ずお住まいの自治体で確認)
支給期間原則3か月間。要件を満たせば3か月ごとに2回まで延長可能(最長9か月間)
収入要件世帯収入合計が「基準額+家賃額(上限あり)」以下(基準額は市区町村民税均等割非課税額の12分の1が目安)
資産要件預貯金等の金融資産合計が、基準額の6か月分(ただし100万円を超えない額)以下
求職活動要件自立相談支援機関との面接(月4回以上)、ハローワークでの職業相談(月2回以上)、企業への応募(原則週1回以上)。回数は全国共通で、自治体の判断で減らせない
支払い方法原則として自治体から家主・管理会社(賃貸人・管理会社)へ直接支払い
生活保護との関係生活保護受給中は対象外(住宅扶助と重複するため)
申請窓口お住まいの市区町村の自立相談支援機関(福祉担当課や社会福祉協議会等、自治体によって窓口の担い手は異なります)
公式情報厚生労働省 生活支援特設ウェブサイト

併用できる他の支援制度

みさき
この制度と一緒に使える制度もあるんですか?
藤井先生
はい、いくつかご紹介しますね。
制度名内容
児童扶養手当子どもを育てているひとり親家庭が対象の手当です。住居確保給付金で家賃の負担が抑えられている間、児童扶養手当を生活費や教育費に回しやすくなります。
ひとり親家庭住宅支援資金貸付住居確保給付金とは別に、ひとり親家庭が住まいに関する資金を借りられる貸付制度です。転居費用など、給付金でカバーしきれない部分の資金繰りに使える場合があります。
母子父子寡婦福祉資金貸付金ひとり親家庭・寡婦の生活再建のための資金を借りられる貸付制度です。こちらも「貸付」なので返済が必要ですが、住居確保給付金だけでは足りない生活資金の選択肢として、窓口で案内してもらえる場合があります。
藤井先生
このほか、都道府県の社会福祉協議会が窓口となる「生活福祉資金貸付制度」(返済が必要な貸付)や、市区町村が実施する「公営住宅の優先入居」制度(ひとり親家庭が優先的に入居できる枠を設けている自治体があります)、そして住居確保給付金自体を含む「生活困窮者自立支援制度」の中のその他の支援(家計改善支援事業など)も、あわせて自立相談支援機関で相談できます。
みさき
住居確保給付金だけじゃなくて、窓口に行けば他の選択肢も一緒に教えてもらえるってことですね。
藤井先生
そのとおりです。母子家庭・父子家庭のどちらでも利用できる制度ですし、シングルマザー・シングルファーザーという枠に関係なく、収入減少や住まいの不安があれば、まず相談してみることをおすすめします。

公式情報・問い合わせ先

問い合わせ先
  • 厚生労働省 生活支援特設ウェブサイト(住居確保給付金): https://corona-support.mhlw.go.jp/jukyokakuhokyufukin/index.html
  • お住まいの市区町村の自立相談支援機関(福祉担当課・社会福祉協議会等、自治体によって窓口の担い手は異なります)
  • 制度の詳しい要件や、お住まいの地域の支給額・基準額は、上記の窓口に直接確認してください

※本記事は令和8年8月時点の公表情報をもとに作成しています。住居確保給付金の支給額、基準額、必要書類、審査の運用などは、個別の状況や市区町村によって異なります。最新情報は、お住まいの市区町村の自立相談支援機関でご確認ください。

住居確保給付金のよくある質問

シングルマザーですが、住居確保給付金は本当にもらえますか?
ひとり親家庭専用の制度ではありませんが、母子家庭・父子家庭も対象に含まれます。離職・廃業から2年以内であること、または本人の都合によらない理由で収入が同程度まで減少していること、収入・資産の要件を満たせば対象になります。正確な判定は自立相談支援機関で確認してください。
パートで働きながらでも申請できますか?
可能です。離職していなくても、休業やシフトの減少などで収入が離職・廃業と同程度まで下がっていれば、その状況を示す書類(シフト表等)を用意して申請できます。
家賃を滞納してしまっているんですが、その分もさかのぼって支給してもらえますか?
いいえ、住居確保給付金は申請日が属する月以降に支払う家賃に充てるための制度で、過去の滞納家賃には充当できません。滞納があって不安な場合も、早めに窓口に相談することをおすすめします。
求職活動をさぼってしまったら、すぐに支給が止まりますか?
求職活動要件を満たさない状態が続くと、支給が途中で中止になることがあります。ただし、体調不良など事情がある場合は、まず窓口に相談してください。状況によって活動内容を調整してもらえる場合があります。
生活保護を受けながら住居確保給付金ももらうことはできますか?
できません。生活保護には家賃にあたる住宅扶助がすでに含まれているため、住居確保給付金と重ねて受け取ることはできない仕組みです。どちらが自分に合っているか分からない場合は、自立相談支援機関で相談すれば整理してもらえます。

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