暮らしを立て直せる|生活保護は申請から原則14日以内に決定【令和8年度】
収入や資産が国の基準(最低生活費)に届かないとき、生活費・住宅費・医療費などの費用がまかなわれる国の制度です。
みさき
先生、ちょっと聞いてもいいですか。この前、パート先の先輩と話してて「生活保護」の話になったんです。先輩は「あれは最後の手段だから、よっぽどのことがない限り使わない方がいい」って言ってたんですけど、実際どうなんでしょう。私自身が今すぐ必要ってわけじゃないんですけど、いざというときのために知っておきたくて。
藤井先生
いい質問ですね。先に結論からお伝えすると、生活保護は「最後の手段」でも「落ちるところまで落ちた人が使う制度」でもありません。収入や資産が国の基準に届かないときに、要件を満たせば使える権利として位置づけられている制度です。法律には、国が生活に困っているすべての国民に対して、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、最低限度の生活を保障するとともに、その人の自立を助ける、と定められています。困窮の程度に応じて使える権利という位置づけだと理解してもらうのが正確です。
みさき
権利、なんですね。てっきり、よっぽど困っていないと申請できないようなイメージがありました。
藤井先生
もう一つ大事な前提があります。生活保護は、ひとり親家庭だけの制度ではありません。単身の方から高齢者世帯、子育て世帯まで、要件を満たせばどんな世帯構成でも対象になります。ただ、ひとり親家庭にとっては、児童扶養手当との関係や、扶養照会・自動車の保有といった誤解されやすいポイントが特に気になるところだと思うので、今日はそこを中心にお話ししますね。
みさき
お願いします。正直、扶養照会っていう言葉を聞いて「親に連絡がいくなら申請できない」って諦めた人の話も聞いたことがあって、それが一番気になってます。
藤井先生
その不安は、あとで一節を使ってきちんとお話しします。先に結論だけお伝えすると、親族の援助が受けられるかどうかは、保護の要否の判定には影響しません。厚生労働省がそう示しています。連絡そのものを控える扱いもあるので、そこも含めて順番に見ていきましょう。
生活保護はどんな制度か
藤井先生
では制度の全体像から見ていきましょう。生活保護は、国が定める「最低生活費」という基準と、その世帯の収入・資産を比べて、収入が基準に届かない差額を保護費として支給する仕組みです。窓口は、お住まいの地域を担当する福祉事務所の生活保護担当です。福祉事務所を設置していない町村にお住まいの場合は、町村役場でも申請の手続きができます。
みさき
「収入が基準に届かない差額」っていうのは、具体的にどういうことですか?
藤井先生
たとえば、国が定める最低生活費が月10万円だとして、実際の収入が月6万円しかなければ、その差額の4万円が保護費として支給される、というイメージです。実際の金額はあくまで一つの例で、最低生活費そのものが、お住まいの地域や世帯の人数・年齢構成によって一件ごとに計算されるので、この記事で「いくらもらえる」という一律の金額は出せません。正確な金額を知りたい場合は、福祉事務所に相談して試算してもらうのが確実です。
みさき
なるほど、家庭ごとに違うから一概には言えないんですね。

藤井先生
保護の内容は、生活費だけではありません。保護の種類は次の8つです。
| 扶助の種類 | 対応する費用 | 支給の内容 |
|---|---|---|
| 生活扶助 | 食費・被服費・光熱水費などの日常生活費 | 年齢別・世帯人員別に算定される基準額(月額)。母子家庭(母子世帯)など特定の世帯には加算がある |
| 住宅扶助 | アパート等の家賃 | 定められた範囲内で実費を支給(上限額は地域によって異なる) |
| 教育扶助 | 義務教育に必要な学用品費 | 定められた基準額を支給 |
| 医療扶助 | 医療サービスの費用 | 指定医療機関に直接支払われ、本人負担は原則ない |
| 介護扶助 | 介護サービスの費用 | 介護事業者に直接支払われ、本人負担は原則ない |
| 出産扶助 | 出産費用 | 定められた範囲内で実費を支給 |
| 生業扶助 | 就労に必要な技能習得等の費用 | 定められた範囲内で実費を支給 |
| 葬祭扶助 | 葬祭費用 | 定められた範囲内で実費を支給 |
みさき
生活費だけじゃなくて、家賃や医療費、子どもの学用品費まで別々に見てもらえるんですね。それは知らなかったです。
藤井先生
そうなんです。世帯の状況に応じて、必要な扶助が組み合わされます。次は、対象になる要件を見ていきましょう。ここで、扶養照会の話にもつながってきます。
対象になる要件と、扶養照会の正しい理解
みさき
ここ、一番聞きたかったところです。「資産や能力を全部使い切ってからじゃないとダメ」とか「親族に援助を断られないと申請できない」みたいな話、よく聞くんですけど本当ですか。
藤井先生
半分正しくて、半分は誤解です。順番に整理しますね。法律では、保護は「生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる」と定められています。つまり、預貯金や使っていない土地・建物があればそれを生活費に充てること、働ける状態であれば能力に応じて働くことが、保護を受けるための要件になっています。
みさき
それはなんとなく想像どおりです。じゃあ扶養、つまり親族からの援助はどうなんですか?
藤井先生
ここが誤解されやすいところです。生活保護法第4条第2項では、「民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする」と定められています。扶養は保護に優先するが要件ではない、という位置づけです。「優先」という言葉が使われていますが、これは、いまお話しした「保護の要件」とは違う位置づけです。厚生労働省の令和3年の事務連絡では、扶養義務者による扶養の可否等が、保護の要否の判定に影響を及ぼすものではない、とはっきり示されています。
みさき
ということは、親族に頼んで断ってもらってからでないと申請できない、というわけではないんですね。
藤井先生
そのとおりです。親族に連絡を取る前でも、援助を断られていなくても、申請はできます。「扶養が保護に優先する」というのは、実際に親族からお金の援助が行われたときに、それを収入として扱う、という意味です。援助が受けられるかどうかを先に確かめることが、申請の条件になっているわけではありません。
みさき
それを聞いて少し安心しました。でも、扶養照会そのものはやっぱり行われるんですよね。親に「娘さんが生活保護を申請しています」って連絡がいくのが怖い、っていう相談、パート先でも聞いたことがあります。
藤井先生
そこは丁寧にお伝えしたいところです。扶養照会は、まず扶養義務者(親・きょうだいなど)の存在を確認したうえで、「扶養の履行が期待できるかどうか」を調べる可能性調査を行い、その結果によって行われるかどうかが決まる手順になっています。そして親やきょうだいに援助を求められない事情があるときは、扶養照会をしない・控える扱いになっています。次の3つの場合です。なお、ここで挙げる「人」は、生活保護を申請する本人ではなく、その扶養義務者(親・きょうだいなど)を指します。
扶養照会をしなくてよい・控えるとされている主なケース
- ①扶養する余裕がないと考えられる人: その扶養義務者自身が生活保護を受けている場合、社会福祉施設の入所者、長期入院患者、主たる生計維持者ではない非稼働者(専業主婦・主夫など)、未成年者、概ね70歳以上の高齢者など
- ②生活歴等から明らかに扶養が期待できない人: 借金を重ねている、相続をめぐって対立している、縁が切られているなど著しい関係不良の場合。当該扶養義務者と概ね10年程度音信不通で交流が断絶していると判断される場合も、これに含めてよいとされている
- ③扶養を求めることが要保護者の自立をかえって阻害すると認められる人: 夫の暴力から逃れてきた母子、虐待等の経緯がある者など
みさき
③のところ、DVから逃げてきた場合が名指しで書かれているんですね。
藤井先生
はい。DVや虐待の経緯があるときは、相手が元配偶者でも親でも、連絡を控える扱いになっています。夫婦や親子はとくに扶養の義務が重いとされる関係ですが、その場合でも控えることが国から示されています。

みさき
この基準に自分が当てはまるかどうか、申請する前にわかるものなんですか?
藤井先生
大事なポイントです。可能性調査は、要保護者本人からの聞き取りが基本になります。そして、扶養照会を拒んでいる場合には、その理由について特に丁寧に聞き取りを行うことになっています。ですから、扶養照会を拒む理由は丁寧に聞き取られることになっているので、「事情があって連絡してほしくない」ということは、申請の際にきちんと窓口で伝えてください。遠慮せずに事情を話すことが大切です。
みさき
「絶対に連絡されない」とまでは言い切れない、ということですよね。
藤井先生
そこは正確にお伝えしないといけません。3つの類型に該当するかどうかは、最終的に福祉事務所が個別の事情を踏まえて判断します。ただ、少なくとも「扶養照会があるから、DVや長期間の音信不通のケースでも一律に連絡される」という仕組みではない、ということは、はっきり言えます。不安がある場合は、申請時に必ずその事情を伝えてください。
自動車の保有について
みさき
もう一つ、よく聞くのが「車を持っていると生活保護は受けられない」という話です。これも本当ですか?
藤井先生
これも、半分正しくて半分は誤解、というパターンです。自動車は資産にあたるので、原則としては処分して生活費に充てることが前提になります。ただし、一律に「保有していたら不可」ではなく、一定の要件を満たせば例外的に保有が認められます。
みさき
どういう場合に認められるんですか?
藤井先生
代表的なのは、障害がある方や、公共交通機関の利用が著しく困難な地域にお住まいの方が、通勤や通院などのために自動車を必要とする場合です。厚生労働省の通知では、処分価値が小さいことに加えて、通勤に使う場合は収入が自動車の維持費を大きく上回ること、通院等に使う場合はガソリン代を除く維持費を他からの援助や他の制度の活用で確実にまかなえる見通しがあることなどを条件に、こうしたケースでの保有を認めるとされています。厚生労働省自身のQ&Aでも「障害をお持ちの方の通勤、通院等に必要な場合等には自動車の保有を認められることがあります」と説明されています。
みさき
「通勤や通院」以外の、普段の買い物とかはどうなんですか?
藤井先生
いまは、障害のある方やその家族・常時介護者が、日常生活に欠かせない買い物などに行く場合も、保有が認められた自動車を使えることになっています。公共交通機関を使うのが著しく難しい地域にお住まいの場合も、地域の交通事情や世帯の状況を福祉事務所が見て認めれば、使えることとされています。
みさき
一律に禁止ではなく、地域の事情や必要性で認められる余地がある、ということですね。
藤井先生
そのとおりです。ただし、これはあくまで一定の要件のもとでの例外的な取り扱いです。「車があっても大丈夫」と単純に言い切ることはできず、実際に認められるかどうかはケースごとの判断になります。お住まいの地域の状況や車の必要性については、申請前に福祉事務所に具体的に相談することをおすすめします。
みさき
「絶対にダメ」でも「絶対に大丈夫」でもなく、事情によって変わる、ということですね。次は、貯金とか持ち家とか、車以外の資産についても知りたいです。
貯金・持ち家など、車以外の資産の扱い
藤井先生
資産全般の考え方は、先ほどお話しした「利用し得る資産を活用すること」という要件が基本になります。預貯金は、生活費として活用したうえで、当面の生活費として一定額を超える部分は保有が難しくなるのが原則です。生命保険は、解約返戻金が高額な場合は解約して活用を求められることがあります。
みさき
持ち家がある場合はどうなるんですか? 住むところがなくなっちゃうんじゃないかと心配になります。
藤井先生
持ち家について、厚生労働省のQ&Aでは「住宅ローンがあるために保護を受給できないことはありません」と明記されています。ただし、保護費から住宅ローンを返済することは、最低限度の生活を保障するという生活保護制度の趣旨から、原則として認められていません。持ち家そのものについても、資産価値が大きい場合は活用(売却)を求められることがありますが、居住の実態や資産価値によって判断が分かれるため、個別に福祉事務所へ確認が必要です。
みさき
なるほど、車と同じで「一律にダメ」ではなく、状況次第なんですね。世帯の分け方についても聞きたいんですが、たとえば親の介護のために同居したい場合、親だけ生活保護を受けるとかってできるんですか?
藤井先生
できる場合があります。生活保護は原則として世帯を単位に決定されますが、厚生労働省のQ&Aでは、そうした事情がある場合に、親御さんだけが保護を受けられることがある、と説明されています。世帯の分け方は個別の判断になるので、これも福祉事務所への相談が前提です。
みさき
働きながらでも受けられる、という話も聞いたことがあります。
藤井先生
はい。就労収入がある方でも、その収入や資産が国の定める最低生活費に満たない場合は、生活保護を受けることができます。ここで比べるのは、収入のすべてではありません。働いて得た収入からは、決められた控除額に加えて、社会保険料・所得税・通勤費などの実費、働くために必要な子どもの預け先の費用も差し引かれます。こうして残った金額を最低生活費と比べ、その差額が保護費として支給されます。「働いていたら申請できない」ということはなく、働いた分がそのまま差し引かれるわけでもありません。
申請の流れと、申請する権利について
みさき
実際に申請するときの流れも教えてください。あと、正直に言うと「窓口で追い返される」みたいな話も聞いたことがあって、それも気になっています。
藤井先生
とても大事な点なので、先にそこからお話しします。法律では、保護は要保護者本人やその扶養義務者、同居の親族の申請にもとづいて開始する、と定められています(ただし、急迫した状況にあるときは、申請がなくても必要な保護が行われます)。そして窓口が申請書を渡さないことは、国が禁じています。
みさき
つまり、窓口が申請書を受け取らない、ということ自体があってはいけないんですね。
藤井先生
そのとおりです。申請は権利であり、窓口が申請書の提出を拒むことはできません。もし窓口で「まずは他の方法を試してから」などと言われて申請書を渡してもらえない、といった経験をした場合は、その場であきらめず、申請の意思をはっきり伝えることが大切です。必要であれば、お住まいの自治体の別の相談窓口や、法テラス、生活困窮者を支援する団体に相談する方法もあります。
ステップ
- 相談・申請: お住まいの地域を担当する福祉事務所の生活保護担当窓口へ行きます(福祉事務所のない町村では町村役場でも可)。厚生労働省のQ&Aでは、相談・申請にあたって「必要な書類は特別ありません」とされています。
- 調査: 申請後、生活状況の調査や、預貯金・生命保険等の資産調査が行われます。世帯の収入・資産等の状況がわかる資料(通帳の写しや給与明細等)の提出を求められることがあります。
- 決定の通知: 申請があった日から原則14日以内に保護の要否が通知されます。扶養義務者の資産及び収入の状況の調査に日時を要する場合など特別な理由があるときは、30日まで延ばすことができます。
- 保護費の支給: 保護が決定すると、最低生活費から収入を差し引いた差額が保護費として支給されます。
みさき
14日から30日って、結構待つこともあるんですね。その間の生活費が本当にない場合はどうすればいいんですか?
藤井先生
厚生労働省のQ&Aでは、申請から保護開始までの当座の生活費がない場合、社会福祉協議会が行う「臨時特例つなぎ資金貸付」を利用できる場合がある、と案内されています。申請の際に、当座の生活が厳しい事情も含めて福祉事務所へ相談してみてください。
みさき
決定までに時間がかかった分、もらえるお金が減ってしまうことはないんですか?
藤井先生
そこは安心してもらって大丈夫です。保護が決定した場合、保護の始期(いつから保護が始まったことになるか)は、決定日ではなく申請のあった日にさかのぼって適用されます。審査に日数がかかったとしても、その間の分が減ってしまうことはありません。逆に、申請より前の期間にさかのぼって保護を受けることはできないので、生活に困ったときは早めに相談・申請することが大切です。なお、生活保護には「いつまでに申請しなければならない」という期限は設けられておらず、生活に困った時点でいつでも申請できます。保護費は月単位で計算され、決定後は毎月支給されるのが基本です(具体的な支給日は自治体によって異なります)。
必要書類
みさき
「特別な書類はない」というお話でしたけど、実際には何を持っていくといいんでしょうか。
藤井先生
申請そのものに必須の書類は決められていませんが、調査の過程で世帯の状況を確認できる資料の提出を求められることが一般的です。以下は一例です。必要書類は、世帯の状況や自治体によって異なりますので、窓口へ行く前に、必ずお住まいの福祉事務所へ確認してください。
| 書類の例 | 用途の目安 |
|---|---|
| 本人確認書類(マイナンバーカード等) | 本人であることの確認 |
| 預貯金通帳の写し | 資産・収入状況の確認 |
| 給与明細・源泉徴収票など | 就労収入の確認 |
| 賃貸借契約書 | 家賃・住宅扶助の算定 |
| 健康保険証など医療に関する資料 | 医療扶助の手続き |
| 年金証書・児童扶養手当証書など | 他の収入の確認 |
みさき
「なくても相談していい」というのは、心強いです。まずは行ってみることが大事なんですね。次は、実際に受給が決まったあとに気をつけることも教えてください。
受給中の義務と、知っておきたい注意点
藤井先生
保護が始まったあとにも、いくつか守るべきことがあります。厚生労働省のQ&Aでは、受給中の義務として、利用し得る資産・能力を生活のために活用すること、能力に応じて勤労に励み支出の節約を図ること、福祉事務所からの指導や指示に従うことが挙げられています。
収入・生計の状況が変わったときの届出義務
保護を受けている間は、収入や支出など生計の状況が変わったとき、または住むところや世帯の構成が変わったときは、すみやかに保護の実施機関か福祉事務所長に届け出る必要があります。就労を始めた、収入が増えた・減った、家族と同居することになった、といった変化があったときは、早めに担当のケースワーカーへ伝えてください。
不正受給には費用の徴収が行われる
収入を偽ったり資産を隠したりして保護を受けた場合は、受け取った分の返還に加えて、その4割以下にあたる金額をあわせて求められます。収入を偽って申告しない、資産を隠すといったことは絶対にしないでください。うっかり申告を忘れた場合も、気づいた時点ですぐにケースワーカーへ相談することが大切です。
みさき
逆に、受給する側の権利についても教えてもらえますか。
藤井先生
はい。厚生労働省のQ&Aでは、要件を満たす限り誰でも無差別平等に保護を受けられること、正当な理由がなければすでに決定された保護を不利益に変更されないこと、保護費には税金などの公課がかからないこと、すでに受けた保護費や保護を受ける権利を差し押さえられないことが、受給者の権利として挙げられています。義務だけでなく、こうした権利もあわせて知っておいてもらえたらと思います。
他の制度との関係
みさき
最後に、他の制度との関係も整理しておきたいです。特に、児童扶養手当をもらっている場合、生活保護を受けるとどうなるのか気になります。
藤井先生
これは、ひとり親家庭にとって特に大事なポイントですね。法律では、扶養と並んで「他の法律に定める扶助」も保護に優先すると定められています。児童扶養手当はこの「他の法律に定める扶助」にあたるので、児童扶養手当を受けている方が生活保護を申請しても、まず児童扶養手当は児童扶養手当として受け取ったうえで、その全額が収入として認定され、最低生活費からその分が差し引かれる、という扱いになります。
みさき
つまり、児童扶養手当と生活保護の両方を、金額を足した状態でまるまる受け取れるわけではない、ということですね。
藤井先生
そのとおりです。児童扶養手当の分だけ、生活保護費が少なくなる仕組みなので、世帯として受け取る総額は、最低生活費の水準にそろえられることになります。ただ、児童扶養手当を受け取っているからといって生活保護が受けられなくなるわけではありませんし、逆に生活保護を受けているからといって児童扶養手当の受給資格そのものがなくなるわけでもありません。あわせて、養育費についても、金銭による援助として収入認定の対象になり得ます。取り扱いの細部は世帯の状況によって異なるため、実際に養育費を受け取っている場合は、申請時に必ず福祉事務所へ申告し、扱いを確認してください。
みさき
年金や国民健康保険との関係はどうですか?
藤井先生
国民年金保険料については、生活保護の生活扶助を受けている間、日本年金機構の制度により法定免除の対象になります。生活保護を受け始めた月の前月分の保険料から免除され、別途「国民年金保険料免除事由(該当・消滅)届」の提出が必要です。国民健康保険については、生活保護を受けている世帯に属する方は、そもそも国民健康保険の被保険者にはなりません。医療については国民健康保険料(税)の軽減・減免ではなく、生活保護の医療扶助でカバーされる形になります。
みさき
住宅費についても、他の制度とはどう違うんですか?
みさき
生活保護そのものではなくても、その手前で相談できる窓口もあるんですよね。
藤井先生
はい。生活保護を申請するかどうか迷う段階や、生活を立て直すための伴走支援を受けたい場合には、生活困窮者自立支援制度の自立相談支援窓口も利用できます。生活保護と並行して、または生活保護に至る前の相談先として、あわせて覚えておいてください。
生活保護制度の基本情報まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 生活保護制度 |
| 対象 | 資産・能力等を活用してもなお最低限度の生活を維持できない世帯(ひとり親家庭に限らずすべての世帯) |
| 保護の種類 | 生活扶助・住宅扶助・教育扶助・医療扶助・介護扶助・出産扶助・生業扶助・葬祭扶助の8種類 |
| 支給額 | 最低生活費から世帯の収入を差し引いた差額(お住まいの地域・家族の人数や年齢構成等で個別に算定) |
| 申請から決定まで | 原則14日以内(特別な理由がある場合は30日まで延長可) |
| 申請窓口 | お住まいの地域を担当する福祉事務所の生活保護担当(福祉事務所のない町村は町村役場) |
| 根拠法令 | 生活保護法 |
| 公式ページ | https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatuhogo/index.html |
併用できる他の支援制度
みさき
今日聞いたこと、他の制度ともつながっている話が多かったので、リンクも整理しておいてもらえるとありがたいです。
藤井先生
まとめますね。ひとり親家庭が受け取っている児童扶養手当は、生活保護を申請しても受給資格自体はなくなりませんが、全額が収入として認定されます。生活保護の対象になるかどうか迷う段階や、あわせて家計の立て直しを相談したい場合は生活困窮者自立支援制度の自立相談支援窓口が使えます。子どもの学校にかかる費用については就学援助に要保護者向けの区分があります。住まいについては住居確保給付金や生活福祉資金貸付制度が、生活保護とは基本的に重ならない関係にあることも覚えておいてください。医療については国民健康保険料(税)の軽減・減免の対象からは外れ、生活保護の医療扶助でカバーされます。
生活保護制度のよくある質問
シングルマザーですが、実家の親に連絡がいくのが怖くて申請をためらっています。
扶養照会は、DVの経緯があるケースや、概ね10年程度音信不通で交流が断絶しているケースなどでは控えることとされています。ただし最終的には個別の事情をもとに福祉事務所が判断するため、絶対に連絡されないとは言い切れません。事情がある場合は申請時に必ず伝えてください。
車を手放さないと、シングルファーザーでも生活保護は受けられませんか。
自動車は原則として処分の対象ですが、障害がある方や公共交通機関の利用が著しく困難な地域にお住まいの方が通勤・通院等に使う場合は、一定の要件のもとで例外的に保有が認められることがあります。認められるかはケースごとの判断のため、福祉事務所に相談してください。
窓口で申請書をもらえませんでした。よくあることなんでしょうか。
生活保護は申請にもとづいて始まる制度で、申請の意思がある方に申請書を渡さない対応は、厚生労働省の通知でも慎むべきとされています。あきらめずに申請の意思を伝えるか、法テラスなど別の相談先も検討してください。
児童扶養手当をもらっていますが、生活保護を申請したら手当はなくなりますか。
受給資格自体はなくなりません。ただし手当の全額が収入として認定されるため、その分だけ生活保護費が少なくなり、世帯として受け取る総額は最低生活費の水準にそろえられます。
この記事の情報は 時点のものです。(初回公開: ) 制度の内容は改正や自治体の運用によって変わることがあります。お手続きの前に、お住まいの市区町村の窓口や公式サイトで最新の内容をご確認ください。
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本文のなかで出てきた制度です。あわせて使えるかどうかは、それぞれの記事と窓口でご確認ください。
- 手当児童扶養手当子どもが18歳に達した日以後の最初の3月31日まで(障害があるときは20歳未満まで)、生活費の手当がもらえる制度。シングルマザー・シングルファーザーの家庭が対象です。第1子は月額最大48,050円で、支払いは奇数月に年6回、2か月分ずつまとめて振り込まれます。収入によって全額もらえる人と一部だけの人がいます。
- 税制国民健康保険料(税)の軽減・減免世帯の所得(収入から差し引ける金額を引いた後の金額)が一定の基準を下回ると、国民健康保険料(税)の均等割・平等割が7割・5割・2割安くなる制度です。ひとり親だから安くなるわけではなく、世帯全体の所得で判定されます。シングルマザー・シングルファーザー家庭でも、離職や出産のときに保険料が安くなる別の軽減があります。
- 給付金住居確保給付金離職や収入減で家賃が払えなくなったとき、3か月(延長して最長9か月)のあいだ、家賃にあたるお金を自治体が原則として大家さんへ直接払ってくれる制度です。シングルマザー・シングルファーザーを含むすべての世帯が対象になり得ます。貸付ではないので返済はいりません。就職して収入が基準を超えたときや住まいを出たときは支給が止まり、入居しなかった場合や退去した場合、偽りがあった場合は受け取った分の返還を求められることがあります。
- 助成就学援助(小・中学校の学用品費・給食費など)就学援助は、学用品費や修学旅行費などの学校費用の一部を市区町村が出す制度です。学校給食費は令和8年4月から扱いが変わり、公立小学校は国の負担軽減が中心、中学校は就学援助が中心です。ひとり親家庭に限らず、経済的に就学が難しいすべての子育て世帯が対象で、児童扶養手当を受けていることがシングルマザー・シングルファーザーの家庭にとって認定の目安になる自治体があります。申請が遅れるとさかのぼれない自治体があるため、早めの申請が大事です。
同じ「給付金」のほかの制度
- 給付金高等職業訓練促進給付金看護師や保育士など、就職に有利な資格を取るために6か月以上学校に通うあいだ、生活費として月10万円(住民税がかかる世帯は月7万500円)が受け取れる制度です。最後の1年は月4万円が上乗せされ、支給は最長4年まで。修了したときには、これとは別に修了支援給付金5万円(住民税がかかる世帯は2万5千円)が一度だけ受け取れます。シングルマザー・シングルファーザーが対象で、申し込みは市区町村の窓口です(実施していない自治体もあります)。
- 給付金自立支援教育訓練給付金仕事に役立つ講座を受けたとき、かかった受講料の60%が戻ってくる制度。シングルマザー・シングルファーザーが対象です。一般教育訓練などの講座は最大20万円、専門実践教育訓練の講座は最大160万円。修了して1年以内に資格をとり就職などをした場合は85%・最大240万円まで受け取れます。
- 東京都給付金018サポート東京都に住む0歳から18歳になった年度の3月31日までの子ども1人につき月5,000円、年間最大6万円になります。シングルマザーの家庭を含め所得(収入から必要な分を差し引いた額)の制限はなく、きょうだいがいれば人数分もらえます。各月1日時点で都内に住んでいた月数分がもらえる金額になるので、年度途中の出生や転入では満額になりません。支給は8月・12月・令和9年4月の3回に分けて振り込まれます。
この記事に間違いや分かりにくいところがあれば、お問い合わせから教えてください。
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